夜勤明け、へとへとに疲れているはずなのに、なぜか目が冴えて眠れない…。ベッドに入っても、心臓の鼓動だけが大きく聞こえて、時間だけが過ぎていく焦り。そして、次の日勤でのパフォーマンス低下や、患者さんの安全に対する不安…。
もしあなたが今、このような辛い悩みを抱えているのなら、この記事はきっとお役に立てるはずです。
夜勤明けの不眠は、あなたの気合や体力が足りないからではありません。それは、私たちの体に備わった体内時計の仕組みによる、ごく自然な反応なのです。この記事では、元看護師である筆者が自身の辛い経験と、睡眠改善インストラクターとしての科学的根拠に基づき、あなたの悩みを解決するための具体的な7つの対策を解説します。
この記事は、医薬品や健康食品の専門家である薬剤師の西口梨恵先生に監修いただいています。今日からすぐに実践できる、本当に役立つ方法だけを厳選してお届けしますので、ぜひ最後までお読みください。
この記事でわかること 3点
- なぜ夜勤明けは疲れているのに眠れないのか、その科学的な理由
- 元看護師が実践した、体内時計をリセットする7つの具体的な方法
- 改善しない場合に頼れる市販薬や専門機関に関する薬剤師の正しい知識
はじめに:「疲れているのに眠れない…」は当然です。元看護師の私も同じでした
「夜勤明けは、とにかく寝ないと体がもたない」と頭では分かっているのに、太陽の光を浴びると脳が覚醒してしまって眠れない。そんな経験、ありませんか?このセクションでは、まずあなたに「その悩みは、決してあなた一人だけのものではない」ということをお伝えしたいと思います。
夜勤明けの焦りと自己嫌悪…ヒヤリハットを起こしかけた私の体験談
あれは、私が看護師になってまだ1年目の頃でした。深夜勤明けでほとんど眠れないまま、次の日勤に入った日のことです。意識が朦朧とする中で、患者さんへの点滴準備をしていました。
その時、アンプル(薬剤の入ったガラス容器)の薬剤名を、一瞬、別の患者さんのものと取り違えそうになったのです。
幸い、ダブルチェックの直前で自分の間違いに気づき、インシデントには至りませんでした。しかし、指先が急速に冷たくなり、心臓が大きく跳ね上がったあの感覚は今でも忘れられません。
「もし、気づかなかったら…」。そう思うと、自分の管理能力のなさに自己嫌悪に陥り、夜勤という働き方そのものへの恐怖すら感じました。
この経験をきっかけに、私は睡眠について猛勉強を始めました。そして、夜勤明けの不眠が単なる「体質」や「気合」の問題ではなく、誰にでも起こりうる科学的な現象であることを知ったのです。
この知識と対策が、私の看護師としてのキャリアを支えてくれました。だからこそ、今同じように悩んでいるあなたに、この経験と知識を共有したいと強く思っています。
この記事の信頼性について(監修者紹介)
本記事は、読者の皆様に正確で信頼できる情報をお届けするため、以下の専門家による監修を受けています。
- 監修者:西口 梨恵 先生
- 肩書き:株式会社まちかどメディカル 代表取締役 / 薬剤師
- プロフィール:東邦大学薬学部卒業後、病院薬剤師としての臨床経験、製薬会社勤務を経て、株式会社まちかどメディカルを設立。医薬品や健康食品に関する深い知見を活かし、人々の健康を多角的にサポートされています。
専門家の監修のもと、科学的根拠に基づいた信頼性の高い情報で、あなたの悩みに寄り添い、具体的な解決策を提示することをお約束します。
【図解】なぜ夜勤明けは眠れない?体内時計(サーカディアンリズム)の仕組み
「なぜ、あんなに疲れているのに眠れないの?」この最大の疑問を解消するために、まずは私たちの体に備わっている「体内時計」の仕組みから理解していきましょう。このメカニズムを知ることで、今後の対策がなぜ有効なのか、腑に落ちるはずです。
私たちの体に備わる「体内時計」とは?
私たちの体には、意識しなくても心臓が動き、呼吸をし、体温を調節する機能が備わっています。これと同じように、約24時間周期で心身の状態にリズムを作り出す仕組みが存在します。これが体内時計(サーカディアンリズム)です。
この体内時計の司令塔は、脳の奥深くにある「視交叉上核(しこうさじょうかく)」という親時計です。そして、全身の細胞にも子時計が存在し、親時計の指令によって体の様々な機能が連動しています。
例えば、朝に光を浴びると親時計がリセットされ、活動モードのスイッチが入ります。そして、そこから約14〜16時間後に、自然な眠りを誘うホルモンであるメラトニンの分泌が始まるようにプログラムされているのです。
この体内時計のおかげで、私たちは「夜になると眠くなり、朝になると目が覚める」という規則正しい生活を送ることができます。
夜勤が体内時計を狂わせる3つの要因(光・体温・ホルモン)
では、なぜ夜勤はこの体内時計を狂わせてしまうのでしょうか。主な要因は3つあります。
- 光のタイミングのズレ
本来、夜に浴びるべきでない強い光(病棟の蛍光灯など)を浴び、逆に朝に浴びるべき太陽の光を浴びながら帰宅することで、体内時計の親時計が混乱します。「今は昼なのか?夜なのか?」と脳が誤作動を起こし、メラトニンの分泌が抑制されてしまうのです。 - 体温リズムの乱れ
私たちの体温は、日中の活動時に最も高くなり、夜の休息時に向かって徐々に下がります。この体温の低下が、スムーズな入眠の合図となります。しかし、夜勤中は体を動かし続けるため、本来下がるべき時間帯に体温が高いまま維持されてしまいます。これにより、脳が「まだ活動時間だ」と勘違いしてしまうのです。 - ホルモン分泌の異常
体内時計が乱れると、メラトニンだけでなく、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌リズムも乱れます。コルチゾールは早朝に最も多く分泌され、体を覚醒させる役割がありますが、体内時計が乱れると、眠りたい時間帯にコルチゾールが分泌され、脳を興奮状態にしてしまうことがあります。

「もしかして?」交代勤務による睡眠不調のサイン
夜勤による体内時計の乱れが続き、心身の不調を感じていませんか?医学的には「交代勤務睡眠障害」と呼ばれる状態につながることもあります。もし気になる症状があれば、以下のサインを参考にしてみてください。
| チェック項目 |
|---|
| 1. 夜勤明けや休日に、寝たいのに眠れないことがよくある |
| 2. 勤務中に耐えがたいほどの強い眠気に襲われる |
| 3. 集中力や注意力が散漫になり、仕事でミスが増えたと感じる |
| 4. 理由もなくイライラしたり、気分が落ち込んだりすることが多い |
| 5. 頭痛、胃腸の不調、食欲不振など、体の不調を感じる |
| 6. 睡眠不足が原因で、プライベートの予定を楽しめない |
| 7. 上記の症状が続いている |
これらのサインに複数心当たりがあり、日常生活に支障が出ていると感じる場合は、一人で抱え込まず専門の医療機関への相談を検討しましょう。
薬剤師 西口先生の視点

薬局の現場でも、『夜勤続きで寝付けなくて…』と相談に来られる方は本当に多いです。多くの方が最初に口にされるのは、『疲れが取れない』『日中のだるさが辛い』といった身体的な不調ですね。市販の栄養ドリンクや一時的な睡眠改善薬に頼る方もいらっしゃいますが、根本的な原因である生活リズムの乱れに対処しないと、なかなか改善しないケースをよく見かけます。まずはご自身の状態を客観的に把握することが、改善への第一歩ですよ。
放置は危険!夜勤による睡眠不足が引き起こす心身への影響
夜勤による睡眠不足は、単なる「眠い」という問題だけでは済みません。ここでは、その状態を放置した場合に起こりうるリスクについて、簡潔にお伝えします。これは、あなた自身を守るために知っておいてほしい、とても大切なことです。
短期的な影響:集中力低下、イライラ、免疫力ダウン
まず、すぐに現れる影響として以下のようなものが挙げられます。
- 認知機能の低下:集中力、判断力、記憶力が低下し、医療現場でのミスや事故のリスクが高まります。
- 感情の不安定化:自律神経が乱れ、些細なことでイライラしたり、落ち込んだりしやすくなります。
- 免疫力の低下:睡眠中に分泌される免疫細胞が減少し、風邪や感染症にかかりやすくなります。
長期的な影響:生活習慣病やメンタル不調のリスク増大
慢性的な睡眠不足は、将来的にも深刻な健康問題につながる可能性があります。
- 生活習慣病リスクの上昇:食欲をコントロールするホルモンのバランスが崩れ、肥満、糖尿病、高血圧などのリスクが高まることが研究で示されています。
- 心血管疾患のリスク:血圧や心拍数の調整機能が乱れ、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上昇します。
- 精神疾患への移行:うつ病や不安障害など、メンタルヘルスの不調を引き起こす可能性があります。
さらに近年の研究では、睡眠不足だけでなく、10時間以上にわたる過度な長時間睡眠も、うつ病や一部の生活習慣病のリスクを高める可能性が示されています(U字型リスク)。睡眠は単に「量」だけでなく、毎日決まった時間に眠り、起きるといった「規則性」も非常に重要です。
【元ナース実践】体内時計をリセットする7つの睡眠改善策
ここからは、いよいよ本題です。私が看護師時代に実践し、多くの相談者さんにも効果があった、体内時計を上手にリセットするための具体的な7つの対策を、時系列に沿ってご紹介します。
すべてを一度に試す必要はありません。できそうなものから、一つずつあなたの生活習慣に取り入れてみてください。
【夜勤前】仮眠を制する者が夜勤を制す!効果的な仮眠のコツ
「どうせ夜勤で起きているのだから、直前まで起きていよう」というのは実は逆効果です。夜勤前に質の良い仮眠をとることは、夜間の眠気や疲労を軽減し、パフォーマンスを維持するために非常に重要です。
- 仮眠のタイミング:勤務開始の2〜3時間前が理想的です。
- 仮眠の時間:90分程度がおすすめです。これは、深い睡眠と浅い睡眠(レム睡眠)のサイクルが約90分だからです。すっきりと目覚めやすくなります。時間がなければ、20〜30分程度の短い仮眠でも効果があります。
- 仮眠の環境:寝室を暗くし、静かな環境を整えましょう。アイマスクや耳栓を使うのも効果的です。
特に16時間勤務など、長時間の夜勤に従事されている場合は「分割仮眠」も有効です。例えば、勤務の早い時間帯に90分、後半の休憩で30分といった形で仮眠を分けることで、一度に長い仮眠をとるよりも明け方の疲労感を軽減できるという研究報告もあります。ご自身の勤務形態に合わせて工夫してみてください。
【夜勤中】パフォーマンスを維持するカフェインと食事の摂り方
夜勤中の眠気覚ましにコーヒーやエナジードリンクが欠かせない、という方も多いでしょう。カフェインは強力な味方ですが、摂るタイミングが重要です。
- カフェイン摂取のタイミング:眠気のピークが来やすい深夜0時から4時頃に備え、勤務開始直後や、勤務前半に摂るのが効果的です。
- 避けるべきタイミング:勤務終了の4〜5時間前からは、カフェインの摂取を避けましょう。カフェインの効果は数時間持続するため、これが夜勤明けの不眠の直接的な原因になることがあります。
- 夜勤中の食事:消化の良いものを、複数回に分けて少量ずつ摂るのがおすすめです。一度にたくさん食べると、消化にエネルギーが使われてしまい、かえって眠気を誘発したり、胃腸の不調の原因になったりします。
薬剤師 西口先生の視点

カフェインの血中濃度が半分になるまでには、平均して4時間程度かかりますが、個人差が非常に大きく2時間から8時間と幅があります。ご自身の体質に合わせて、例えば勤務終了の6時間以上前から摂取を控えるなど、余裕を持った時間設定を心がけると良いでしょう。眠気覚ましには、カフェインだけでなく、冷たい水で顔を洗ったり、軽いストレッチをしたりするのも効果的ですよ。
【夜勤後①・帰宅時】浴びる光を制し、脳を睡眠モードへ導く
夜勤明けの不眠対策は、病院を一歩出た瞬間から始まっています。最大のポイントは、体内時計をリセットしてしまう「朝の強い光」をいかに避けるか、です。
- サングラスの活用:通勤時にサングラスをかけることを強くおすすめします。これにより、網膜から脳への光の刺激が減り、メラトニンの分泌が抑制されるのを防ぎます。
- 寄り道をしない:コンビニなどの明るい場所への立ち寄りは、脳を覚醒させてしまいます。買い物は夜勤前に済ませておき、まっすぐ家に帰りましょう。
私が看護師1年目で不眠に悩んでいた時、見かねた先輩が「だまされたと思って、明日からサングラスして帰ってみな」とアドバイスをくれました。半信半疑で試したところ、それまでが嘘のように、すっと眠りにつけたのです。
あの時の感動は忘れられません。光のコントロールが、これほどまでに睡眠に影響を与えるのだと実感した原体験です。
【夜勤後②・帰宅後】入眠をスムーズにする食事と入浴法
帰宅後は、心身を休息モードに切り替えるための大切な時間です。
- 食事:お腹が空いている場合は、消化の良いスープやヨーグルト、バナナなどを軽く摂る程度にしましょう。満腹状態では、消化活動が睡眠を妨げてしまいます。
- 入浴:熱いお風呂は交感神経を刺激し、脳を覚醒させてしまいます。38〜40度のぬるめのお湯に10〜15分程度浸かるか、シャワーで済ませるのがおすすめです。深部体温が一度上がり、その後に下がっていく過程で自然な眠気が訪れます。
- リラックスタイム:寝る前にスマートフォンやテレビを見るのはNGです。ブルーライトがメラトニンの分泌を強力に抑制してしまいます。代わりに、穏やかな音楽を聴いたり、ノンカフェインのハーブティーを飲んだりして、リラックスできる時間を過ごしましょう。
【休日】寝だめはNG?生活リズムを崩さない休日の過ごし方
「夜勤明けの休日は、昼まで寝ていたい」その気持ち、痛いほど分かります。しかし、「寝だめ」は体内時計のリズムをさらに乱してしまう原因になります。
- 起床時間:休日の起床時間は、いつもの起床時間のプラス2時間以内に留めましょう。それ以上長く寝てしまうと、時差ボケのような状態になり、次の勤務日に影響が出てしまいます。
- 朝の光を浴びる:起きたらまずカーテンを開け、太陽の光を浴びましょう。これが、乱れた体内時計をリセットするための最も強力なスイッチになります。
- 軽い運動:日中にウォーキングなどの軽い運動を取り入れると、夜の寝つきが良くなります。ただし、就寝直前の激しい運動は避けましょう。
今すぐできる!最高の睡眠環境を作る3つのポイント
せっかく生活習慣を整えても、眠るための環境が整っていなければ、その効果は半減してしまいます。日中に質の高い睡眠をとるために、寝室を「睡眠のための聖域」に変える3つのポイントをご紹介します。
光の遮断:遮光カーテンとアイマスクの活用
日中の睡眠で最も重要なのが、光を完全にシャットアウトすることです。
- 遮光カーテン:遮光等級1級のカーテンを選ぶのが理想的です。人の顔の表情が識別できないレベルの暗さを実現できます。カーテンの上下や横からの光漏れも防ぐために、サイズが合ったものや、カーテンレールを覆う「リターン仕様」などを検討すると良いでしょう。
- アイマスク:カーテンだけでは防ぎきれないわずかな光も遮断するために、アイマスクの併用が非常に効果的です。自分の顔にフィットし、圧迫感のないものを選びましょう。
音の遮断:耳栓やホワイトノイズマシンの選び方
日中は、家族の生活音や屋外の工事音など、睡眠を妨げる騒音がたくさんあります。
- 耳栓:様々な素材(フォームタイプ、シリコンタイプなど)がありますので、自分の耳に合い、遮音性が高いものを選びましょう。
- ホワイトノイズマシン:「サー」という換気扇のような音を出すことで、突発的な物音を目立たなくさせる効果(音のマスキング効果)があります。最近では、スマートフォンアプリでも代用できます。
温度と湿度のコントロール:快適な寝室環境の目安
快適な睡眠のためには、寝室の温度や湿度を整えることが大切ですが、最終的な目標は布団の中の環境、すなわち「寝床内環境(しんしょうないかんきょう)」を理想的な状態に保つことです。
厚生労働省の指針によれば、寝具の中が温度33℃前後・湿度50%前後に保たれるのが最も快適とされています。室温と寝具(パジャマや掛け布団)をうまく組み合わせて、この理想的な寝床内環境を目指しましょう。夏場は室温を25〜26度、冬場は22〜23度程度に設定し、エアコンのタイマー機能などを活用するのがおすすめです。
市販の睡眠改善薬やサプリに頼るのはアリ?薬剤師が教える正しい知識
セルフケアを試しても、どうしても眠れない…。そんな時、市販薬やサプリメントが頭をよぎるかもしれません。ここでは、薬剤師の西口先生の監修のもと、それらと正しく付き合うための知識を詳しく解説します。これは、あなたの健康を守るための非常に重要な情報です。
睡眠改善薬と睡眠薬(処方薬)の根本的な違いとは
まず、ドラッグストアなどで手に入る「睡眠改善薬」と、医師が処方する「睡眠薬」は、全く異なるものです。
- 睡眠改善薬(市販薬)
- 主成分:抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン塩酸塩など)。これは、アレルギー症状を抑える薬の副作用である「眠気」を主作用として利用したものです。
- 作用:脳の活動を強制的に鎮静させるのではなく、一時的な不眠症状を緩和する目的で使われます。
- 注意点:あくまで「一時的な不眠」に対するもので、慢性的な不眠には効果が期待できず、連用は推奨されません。
- 睡眠薬(処方薬)
- 主成分:ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動薬など、様々な種類があります。
- 作用:脳の興奮を抑えたり、体内時計を調整したりと、不眠の原因に直接働きかけ、強制的に眠りを誘います。
- 注意点:医師の診断と処方が必要です。依存性や副作用のリスクもあるため、医師の指導のもとで正しく服用する必要があります。
サプリメント(GABA、テアニン等)は効果がある?選ぶ際の注意点
最近では、睡眠の質をサポートする機能性表示食品のサプリメントも多く販売されています。
- 主な成分:GABA、L-テアニン、グリシンなどが代表的です。これらは、リラックス効果や深部体温の低下をサポートすることで、睡眠の質を向上させると報告されています。
- 位置づけ:サプリメントはあくまで「食品」であり、医薬品ではありません。不眠症を「治療」する効果はありませんが、生活習慣の改善と併用することで、入眠をサポートする役割が期待できます。
- 選ぶ際の注意点:製品を選ぶ際は、「機能性表示食品」の表示があるものが一つの目安になります。ただし、機能性表示食品は、事業者の責任において科学的根拠を国に届け出たものであり、国が個別に審査・承認した特定保健用食品(トクホ)とは制度が異なります。あくまで健康な方の健康維持をサポートする「食品」であり、不眠症を治療する医薬品ではない、ということを理解しておくことが大切です。
こんな使い方は危険!よくある誤解と副作用
市販の睡眠改善薬は手軽に手に入る反面、誤った使い方をすると危険を伴います。
- 長期連用:睡眠改善薬を漫然と使い続けると、耐性ができて効きにくくなったり、薬がないと眠れないという精神的な依存状態に陥ったりする可能性があります。
- お酒との併用:アルコールと睡眠改善薬を一緒に飲むのは絶対にやめてください。互いの作用を増強し、呼吸抑制などの重篤な副作用を引き起こす危険性があります。
- 副作用:翌朝の眠気、だるさ、めまい、頭痛などが現れることがあります。また、抗ヒスタミン薬の副作用として、口の渇きや排尿困難などが起こることもあります。
薬剤師 西口先生からの注意喚起

『市販薬だから安全』という誤解は非常に危険です。特に、睡眠改善薬を『毎日飲まないと眠れない』という状態になっている場合、それは薬に頼っているのではなく、背景に治療が必要な睡眠障害が隠れている可能性があります。市販薬の使用は、2〜3日試しても改善しない場合は中止し、専門家へ相談することを強く推奨します。自己判断で使い続けることのリスクを、ぜひ知っておいてください。
薬剤師に相談するメリットと伝え方のコツ
薬局は、薬を買うだけの場所ではありません。あなたの健康をサポートする専門家である薬剤師がいます。
- 相談するメリット:あなたの症状や生活習慣、他に飲んでいる薬などを総合的に判断し、睡眠改善薬が適切かどうか、あるいはサプリメントや漢方薬といった他の選択肢があるかなど、専門的なアドバイスを受けることができます。
- 伝え方のコツ:以下の点を整理して伝えると、より的確なアドバイスが受けられます。
- いつから、どのような症状で困っているか(例:寝つきが悪い、途中で目が覚める)
- 夜勤の頻度やシフトのパターン
- これまで試したセルフケア
- 他に飲んでいる薬やサプリメント、アレルギーの有無
- 持病の有無(特に、緑内障や前立腺肥大症の方は注意が必要です)
薬剤師 西口先生からのメッセージ

『こんなことで相談していいのかな…』なんて、全く思う必要はありませんよ。私たちは、あなたの健康に関する一番身近な相談相手でありたいと思っています。処方せんがなくても、ぜひ気軽に薬局のカウンターで声をかけてください。『夜勤で眠れなくて…』その一言からで大丈夫です。一緒に最適な方法を考えましょう。
セルフケアで改善しない…専門医に相談すべきサインと受診先
ここまでご紹介したセルフケアを試しても、不眠の症状が改善しない場合は、一人で抱え込まずに専門家の力を借りることが大切です。医療機関への受診は、決して大げさなことではありません。
こんな症状が2週間以上続いたら受診を検討
以下のサインが見られたら、一度専門医への相談を考えてみてください。
何科に行けばいい?(睡眠外来・心療内科など)
不眠の相談ができる主な診療科は以下の通りです。
| 診療科 | 特徴 |
|---|---|
| 睡眠外来・睡眠科 | 睡眠に関する問題を専門的に扱う。終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)など、詳細な検査が可能。 |
| 精神科・心療内科 | ストレスやうつなど、精神的な不調が不眠の原因と考えられる場合に適している。 |
| 内科 | まずはかかりつけ医に相談したい場合や、他の身体疾患(むずむず脚症候群など)が疑われる場合に。 |
どこを受診すればよいか迷う場合は、まずはかかりつけの内科医に相談するか、お住まいの地域の保健所などに問い合わせてみるのも良いでしょう。
医師に伝えるべきこと準備リスト
受診の際は、事前に以下の情報をメモしておくと、診察がスムーズに進みます。
- 睡眠に関する情報
- いつから、どのような症状で困っているか
- 就寝・起床時間、寝付くまでの時間、夜中に目覚める回数など
- いびきや歯ぎしりの有無
- 生活習慣に関する情報
- 勤務スケジュール(シフトのパターン)
- 食事、運動、飲酒、喫煙の習慣
- カフェイン摂取の状況
- 心身の状態
- 日中の眠気の程度
- 現在の気分の状態(イライラ、不安、落ち込みなど)
- 現在治療中の病気や、服用中の薬
- 伝えたいこと
- 一番困っていることは何か
- 治療に対して希望すること(例:薬にはあまり頼りたくない、など)
夜勤と睡眠に関するよくある質問(FAQ)
最後に、夜勤と睡眠に関してよくいただく質問にお答えします。
Q. どうしても眠れない時、お酒に頼るのはダメですか?
A. おすすめできません。アルコールは一時的に寝つきを良くするように感じられますが、実は睡眠の質を著しく低下させます。アルコールが分解される過程で、眠りを浅くし、夜中に目が覚める(中途覚醒)原因となります。
また、利尿作用があるため、トイレが近くなることも睡眠を妨げます。習慣化すると依存のリスクもあるため、「寝酒」は避けるべきです。
Q. 夜勤明けに運動するのは効果的ですか?タイミングは?
A. 眠る直前の激しい運動は、体温を上昇させ交感神経を刺激するため、入眠を妨げます。もし運動をするのであれば、軽いストレッチやヨガなど、リラックス効果のあるものを短時間行う程度にしましょう。
本格的な運動(ランニングや筋トレなど)は、夜勤明けの睡眠から目覚めた後、次の活動時間に行うのが効果的です。
Q. シフトの交代パターン(日勤→深夜勤など)で気をつけることは?
A. シフトの交代パターンは、「日勤→準夜勤→深夜勤」のように、勤務時間が徐々に後ろにずれていく「順行ローテーション」が、体内時計への負担が少ないとされています。
逆に、勤務時間が前にずれる「逆行ローテーション」は、調整が難しく、体の負担が大きくなります。もしシフトの希望が出せる職場であれば、この点を考慮してみるのも一つの方法です。
まとめ:正しい対策で、夜勤と上手に付き合っていきましょう
ここまで、夜勤明けで眠れなくなる科学的な理由から、元看護師である私が実践してきた具体的な7つの対策、そして専門家との付き合い方まで、詳しく解説してきました。
夜勤という働き方は、私たちの社会に不可欠なエッセンシャルワークですが、心身への負担が大きいことも事実です。しかし、正しい知識を持ち、ご自身の体をいたわる対策を実践することで、その負担を大きく軽減することができます。
もう一度、今日からできることをチェックリストで確認してみましょう。
夜勤明けの不眠を解消!やることリスト最終チェック
| タイミング | やること | チェック |
|---|---|---|
| 夜勤前 | 90分以内の仮眠をとる | ☐ |
| 夜勤中 | 勤務終了の6時間以上前からカフェインを控える | ☐ |
| 帰宅時 | サングラスをかけて強い光を避ける | ☐ |
| 帰宅後 | 消化の良い食事をとり、ぬるめのお風呂に入る | ☐ |
| 就寝時 | 寝室を真っ暗にし、スマホは見ない | ☐ |
| 休日 | 起床時間はいつもより+2時間以内にする | ☐ |
この記事が、かつての私のように、夜勤による睡眠障害に一人で悩み、苦しんでいるあなたの助けに、少しでもなれたなら、これ以上に嬉しいことはありません。
最後に、監修の西口先生からメッセージです

毎日、私たちの見えないところで社会を支えてくださっている交代勤務の皆様に、心から敬意を表します。ご自身の健康を後回しにしてしまいがちかもしれませんが、皆様が健康であってこそ、その素晴らしいお仕事が続けられるのだと思います。不調を感じたら、それは決して弱いからではありません。体の正直なサインです。どうかご自身の大切に、そして気軽に私たち専門家を頼ってくださいね。応援しています。
参考文献・相談窓口
- 交代勤務睡眠障害 |
- 日本睡眠学会
- お近くの薬局・ドラッグストアの薬剤師にご相談ください。