「肥満」とは、標準体重を超えた太りすぎの状態を指し、健康にさまざまな悪影響を及ぼす状態です。
特に肥満度1の状態は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクが高まることが知られています。
肥満を解消することは、生活習慣病のリスクを減らすだけでなく、日常生活の質を向上させるためにも重要です。
本記事では、肥満度1の方に向けた効果的なダイエット方法について、食事法や運動法、さらにはおすすめのダイエット薬に至るまで、詳しく解説します。
そもそも肥満度1とは?
まず、「肥満度」についておさらいしましょう。
健康診断や人間ドックなどで「肥満度」という項目を見たことがある方も多いと思いますが、肥満度の計算方法を知っている方は少ないでしょう。
計算方法を知っていれば、自宅で簡単に自分の肥満度を確認できますので、しっかり理解しましょう。
肥満度は体格指数(BMI)から算出される
肥満度とは、体の太り具合を数値で示したもので、主に体格指数(BMI:Body Mass Index)を用いて算出されます。
BMIは、体重(kg)を身長(m)の二乗で割ることで求められる値です。
この数値をもとに、個人の肥満度を評価できます。
BMIの計算式は上の通りです。²
例えば、体重70kg、身長160cm(1.6m)の場合、BMIは次のように計算されます。
BMI=70÷(1.6×1.6)=27.3
このようにして計算されたBMIの値をもとに、肥満度を評価します。
BMIが25以上だと肥満度1と判定される
前章で算出したBMIの値によって、肥満度を以下のように分類します。
BMI(kg/m₂) | 判定 |
---|---|
18.5未満 | 低体重 |
18.5以上25未満 | 普通体重 |
25以上30未満 | 肥満(1度) |
30以上35未満 | 肥満(2度) |
35以上40未満 | 肥満(3度) |
40以上 | 肥満(4度) |
上記の表の通り、肥満度1とは、BMIが25以上30未満の状態を指します。
この範囲に該当する場合、体重が標準を超えているため、生活習慣病のリスクが高まります。
例えば、糖尿病や高血圧、脂質異常症などがその一例です。
肥満度1の人は、健康的な生活を維持するために、適切な食事管理や運動を取り入れることが重要です。
具体的には、バランスの取れた食事を心がけ、定期的に有酸素運動を行うことで、体重のコントロールを図ることが推奨されます。
内臓脂肪が多い人はさらに注意が必要
BMIが25未満であったとしても、油断してはいけません。
BMIの数値上問題がないように見えても、内臓脂肪が多い場合は注意が必要です。
つまり、BMIが25以上で、内臓脂肪が多い人はさらに注意が必要ということです。
内臓脂肪が多い状態、いわゆる内臓脂肪型肥満は、健康に重大なリスクをもたらします。
内臓脂肪とは、腹部の内臓周辺に蓄積される脂肪のことで、高血圧や動脈硬化、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の発症リスクを大幅に高めることが知られています。
これらの疾患は、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な健康障害につながる可能性があるため、内臓脂肪が多い人は特に注意が必要です。
内臓脂肪は代謝活動が活発で、脂肪細胞から放出される生理活性物質(アディポサイトカイン)が血糖値や血圧、脂質代謝に悪影響を及ぼします。
特に、内臓脂肪の蓄積が進むと、アディポネクチンという抗動脈硬化作用を持つホルモンの分泌が減少し、結果として動脈硬化のリスクが高まります。
内臓脂肪型肥満を腹囲で判定する方法
内臓脂肪型肥満の判定には、腹囲(ウエスト周囲径)の測定が有効です。
腹囲は、へその高さでお腹の周囲を測定します。
日本肥満学会によると、内臓脂肪型肥満の判定基準は以下の通りです。
性別 | 基準値 |
---|---|
男性 | 腹囲85cm以上 |
女性 | 腹囲90cm以上 |
この基準を超えると、内臓脂肪型肥満と判定されます。
腹囲を測定することで、簡便に内臓脂肪の蓄積状況を把握できるため、健康管理において重要な指標となります。
測定は、自宅でも容易に行うことができます。
以下の手順に従って、正確に測定しましょう。
1.メジャーを準備します。
2.立った状態で、自然な呼吸を保ちます。
3.へその高さで、メジャーを水平に巻きつけます。
4.メジャーがしっかりと体に沿うようにしながら、測定します。
内臓脂肪型肥満の判定は、定期的な測定によって自身の健康状態を把握し、早期に対策を講じることが重要です。
特に、腹囲が基準を超えている場合は、食事改善や運動の習慣を見直し、内臓脂肪を減らす努力が必要です。
内臓脂肪は、生活習慣の改善によって比較的減らしやすい脂肪です。
バランスの取れた食事、適度な有酸素運動、そして規則正しい生活習慣を取り入れることで、健康的な体を維持することができます。
内臓脂肪が多いことに気付いたら、早めの対策を心掛けましょう。
肥満解消のための正しいダイエット食事法
それでは次に、具体的なダイエット方法を紹介していきます。
まずは、肥満解消のための正しいダイエット食事法から確認してきましょう。
食事は規則正しく一日3食食べる
まず、基本的なルールですが、食事は規則正しく、一日3食食べるようにしましょう。
当たり前のように感じてしまいますが、一日3食、規則正しく食べることは、ダイエットにおいて大変重要なポイントです。
食事の間隔が空きすぎると、食べすぎを招いてしまうことがあります。
また、間食を控えて、食事の時間を一定に保つことで、体のリズムを整え、効率的にエネルギーを消費できるようになります。
寝る2~3時間前には食事を済ませる
夜遅くに食事を摂ると、体がそのエネルギーを脂肪として蓄積しやすくなってしまいます。
特に寝る前の2~3時間は消化活動が落ち着くため、体脂肪の増加に繋がりやすいです。
夕食が遅くなる場合は、早めに軽食を取り、その後の夕食を軽めにすると良いでしょう。
これにより、夜間のエネルギー摂取を抑え、肥満の予防につながります。
おやつの内容を見直す
おやつの内容を見直すことは、カロリー摂取をコントロールする上で重要なポイントです。
おやつには、スナック菓子や甘いものは避け、代わりにナッツやフルーツ、プロテインバーなど、栄養価の高いものを選びましょう。
また、家に好物をストックしないようにすることで、無駄な間食を防ぐことができますよ。
飲み物にも要注意
ダイエット中は、飲み物にも注意が必要です。
特に、缶コーヒーやスポーツ飲料には多くの糖類が含まれているため、これが肥満の原因になります。
ダイエット中は、無糖の飲み物を選ぶか、自分で砂糖の量を調節できるコーヒーを飲むようにしましょう。
水分補給は水を基本とし、1日1リットルを目安に飲むのがおすすめです。
ダイエット中の食品の選び方
前章では、肥満解消のためのダイエット食事法を紹介しました。
続いては、実際の食事でどんな食品を選ぶべきかについて解説していきます。
食品を買う前に栄養成分表示を確認する
栄養成分表示とは、食品の袋や箱になどに記載されている「熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量(塩分)」の5項目のことです。
市販の食品を選ぶ際には、必ず栄養成分表示を確認するようにしましょう。
エネルギー量や脂質、糖質、塩分などの含有量を確認することで、簡単にダイエット中に選ぶべき食品、避けるべき食品を判断することができます。
栄養成分表示の見方は、以下です。
熱量(カロリー):熱量とは、すなわちカロリーのことです。
食品を購入する前に商品の熱量(カロリー)を確認し、摂取カロリーをコントロールします。
特に高カロリーのスナック菓子やファストフードは避けるようにしましょう。
タンパク質:タンパク質は筋肉の維持・増加に重要な栄養素です。
筋肉が増えると消費カロリー量が増えるため、ダイエットに効果があります。
1食あたり10g以上を目標に摂取しましょう。
脂質:総脂質、飽和脂肪、トランス脂肪の量をチェックします。
特に、飽和脂肪とトランス脂肪は摂りすぎないように意識しましょう。
炭水化物:この項目では、総炭水化物量、食物繊維、砂糖の量を確認します。
ダイエット中は食物繊維を多めに摂取し、砂糖は少なめにすることが重要です。
食塩相当量(塩分):塩分はダイエットに直接関わる栄養素ではありませんが、摂りすぎは高血圧の原因になります。
健康維持のためにも、摂取量を意識してみましょう。
1日あたり2,300mg未満が目安とされています。
この中でも、特に脂質はエネルギーが高いため、注意が必要です。
脂質の摂りすぎは、体重増加や肥満の原因になりやすいです。
揚げ物や中華料理など、油を多く使用する料理には脂質が多く含まれるため、ダイエット中は我慢するようにしましょう。
その代わりに、鶏むね肉や魚の白身など、脂肪分の少ない食材を積極的に取り入れます。
また、テフロン加工のフライパンを使用すれば、調理に使う油の量を減らすことも可能です。
「まごわやさしい」で簡単に栄養バランスを整える
食品を購入する際に、毎回栄養成分表示を確認するのは面倒という方のために、「まごわやさしい」を紹介します。
「まごわやさしい」とは、毎日の食事で摂取すべき栄養素をバランス良く含む食品群の頭文字を取った言葉です。
ま:豆類(大豆、納豆など) – 良質なタンパク質を含みます。
ご:ゴマ – カルシウムや鉄分が豊富です。
わ:わかめなどの海藻類 – 食物繊維やミネラルを多く含みます。
や:野菜 – ビタミン、ミネラルの宝庫です。
さ:魚 – 良質なタンパク質とオメガ3脂肪酸が豊富です。
し:しいたけなどのキノコ類 – 低カロリーで食物繊維が豊富です。
い:芋類 – ビタミンCや食物繊維が多く含まれます。
食品を選ぶ際に、これらを意識することで、栄養成分表示を確認することなく、簡単に栄養バランスの良い食事が実現できます。
低エネルギー食品を上手に活用する
ダイエット中は低エネルギー食品を上手に活用することもポイントです。
低エネルギー食品とは、満腹感を得ながらカロリー摂取を抑えるのに役立つ食品の総称です。
代表的な低エネルギー食品としては、野菜やこんにゃく、きのこ類や海藻などがあります。
これらを積極的に摂取しましょう。
さらに、低エネルギー食品を摂取する際には、野菜を大きめに切ったり、盛り付けを工夫することで、見た目のボリュームを増やし、満足感を高めることができます。
肥満解消のための正しいダイエット運動法
続いては、肥満解消のための正しいダイエット運動法の紹介です。
ダイエットの成功には、食事だけでなく、適度な運動も重要です。
カロリー消費に要する運動量を理解する
ダイエットをしたいからといって、むやみやたらに運動するのは効率的ではありません。
食事から摂取するエネルギー量と、そのエネルギーを消費するために必要な運動量を理解して、効率的に運動するようにしましょう。
例えば、缶コーヒー(250ml)1缶のエネルギー量は約100kcalです。
これを消費するためには、普通の歩行で約35分間、ゆっくりとした自転車で約30分間の運動が必要です。
他にも、大福もち(小)1個は約160kcalで、これを消費するには急ぎ歩きで約35分間、自転車(普通時)で約40分間の運動が必要です。
また、アイスクリームコーンカップ1個(約250kcal)を消費するためには、エアロビクスで約30分、ゆっくりしたジョギングで約40分の運動が必要です。
このように、摂取カロリーと消費カロリーを把握し、運動量を調整することが大切です。
有酸素運動を取り入れる
続いて、実際におすすめの運動方法を紹介します。
ダイエットに効果的な運動は、「有酸素運動」です。
有酸素運動は、体脂肪を効果的に燃焼させるための運動法として知られています。
ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳などが代表的な有酸素運動です。
これらの運動は、心肺機能を向上させるだけでなく、全身の脂肪を効率的に燃焼させます。
有酸素運動のポイントは、20分以上続けることです。
運動を開始してから約20分後に脂肪の燃焼が始まるため、少なくとも30分間、できれば週に3回以上の頻度で行うことが理想的です。
例えば、ウォーキングを毎日30分続けることで、3ヶ月で約4kgの内臓脂肪を減らすことが期待できます。
膝への負担を避けたい場合は、水中ウォーキングがおすすめです。
筋力トレーニングで基礎代謝を上げる
筋力トレーニングは、基礎代謝を高める効果があります。
基礎代謝とは、何もしなくても消費されるエネルギー量のことです。
筋肉量が増えることで基礎代謝が上がり、日常生活でのエネルギー消費量も増えます。
大きな筋肉群(脚、胸、背中)を中心にトレーニングすることで、効果的に基礎代謝を上げることができます。
例えば、スクワットやプッシュアップ、ダンベル運動などが効果的です。
これらの運動は、自宅でも手軽に取り組むことができます。
テレビを見ながらのダンベル運動や、家事をしながらのスクワットなど、日常生活に取り入れることで継続しやすくなります。
食事制限や運動が苦手ならメディカルダイエットもおすすめ
ここまで、肥満解消に効果のある食事法や運動法を紹介してきました。
しかし、これらの方法でダイエットを成功させるためには、たくさんの我慢が必要です。
そのため、せっかくダイエットを決心しても、すぐに挫折してしまう方が多いのではないでしょうか。
そこで、食事制限や運動がなかなか続かない方のために、「メディカルダイエット」を紹介します。
医学の力を借りることで、無理せず簡単に痩せることが可能です。
GLP-1受容体作動薬
メディカルダイエットで使われるダイエット薬の中でも、一番おすすめなのは「GLP-1受容体作動薬」です。
GLP-1受容体作動薬には、インスリンの分泌を促進し、血糖値の上昇を抑える働きがあります。
また、胃からの食物排出を遅らせることで満腹感を持続させ、食欲を抑える効果もあります。
これらの効果により、GLP-1受容体作動薬はダイエット薬として使用されています。
GLP-1受容体作動薬は、世界28カ国で「抗肥満薬」として認められています。
自己注射薬と内服薬の両方があり、低血糖のリスクが低いことが特徴です。
以下の記事では、GLP-1受容体作動薬の効果やおすすめの購入方法などを分かりやすく解説しています。
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食欲抑制内服薬
食欲抑制内服薬として代表的なのがマジンドール(サノレックス)です。
この薬は、食欲に関わる神経に働きかけ、食欲を抑える効果があります。
BMIが35以上の肥満症患者に対して保険適用となります。
主な副作用には、口渇感、便秘、吐き気、睡眠障害、胃部不快感、発疹、かゆみなどがあります。
耐性ができるため、1~3ヶ月の短期間の投与が一般的で、半年~2年の周期で繰り返し使用することが推奨されています。
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脂肪吸収抑制剤
脂肪吸収抑制剤として知られるオルリスタットは、脂肪の吸収を抑制し、体外へ排出する効果があります。
このため、無理な食事制限をせずに体重を減少させることが可能です。
しかし、保険適用外となります。
主な副作用として、脂溶性ビタミンの排出が挙げられます。
また、下痢や脂肪便、油漏れが起こる可能性があるため、用法・用量を守って使用することが重要です。
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漢方薬
中医学(漢方学)では、肥満は食べ過ぎや運動不足だけでなく、体内の不調が原因で「太りやすい体質」になっていると考えます。
個々の体質や症状に合わせた「弁証論治」に基づき、体質を整えるための漢方薬が処方されます。
代表的な漢方薬には、帰脾湯(キヒトウ)、真武湯(シンブトウ)、防風通聖散(ボウフウツウショウサン)、二朮湯(ニジュツトウ)、苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)、防己黄耆湯(ボウイオウギトウ)、胃苓湯(イレイトウ)などがあります。
これらの漢方薬は、肥満の解消だけでなく、全体的な健康状態の改善を目指しています。
以下の記事では、ダイエットにおすすめの漢方薬について分かりやすく解説していますので、気になる人はこちらも読んでみてください。
ダイエットとの併用におすすめな漢方薬を分かりやすく解説
まとめ
「肥満度1」とは、BMIが25以上30未満の状態のことを言い、健康リスクが高いため、適切な対策が必要です。
内臓脂肪型肥満の方はさらに注意が必要で、腹囲の測定で判断します。
効果的なダイエットには、寝る2~3時間前に食事を済ませ、バランスの取れた「まごわやさしい」食事を取り入れ、間食や糖類を控え、摂取エネルギー量を減らすことが重要です。
また、低エネルギー食品を選び、栄養成分表示を活用し、週3回の有酸素運動や筋力トレーニングを行います。
薬物療法としては、医師の指導のもとでGLP-1受容体作動薬、食欲抑制内服薬、脂肪吸収抑制剤、漢方薬を使用します。
これらの方法を組み合わせることで、健康的に体重を減らし、生活習慣病のリスクを減らせます。